統合メディカルケアセンター「Tree of Life」

2019年01月25日 / ,

これでいいのか日本の医療?   第19話 スギ花粉症と腸内細菌。アレルギーは治る病気です!

 なんと、仙台では、例年より1ヶ月半も早く、1月16日にスギ花粉の飛散が始まりました。花粉症患者さんには悪いニュースですね。
今や、日本人の4人に一人はスギ花粉症です。宮城県は、全国でも9番目にスギ花粉症患者さんの多い県です。花粉症は自然治癒することが少ない病気で、加齢により、症状が軽くなったとおっしゃる方もいますが、大規模な調査の結果では、高齢者の花粉症の罹患率は若年者の罹患率と変わりませんでした。一生つきあわなくてはいけない病気です。
現在、日本のスギ花粉症治療の主体は抗アレルギー剤です。アレルギー症状を抑える薬です。以前患者様に、『先生、この薬をずいぶん飲んでいるけど、いつになったらアレルギーは治るの?』と聞かれたことがあります。もちろん、抗アレルギー剤をいくら飲んでもアレルギー体質は治ることはありません。抗アレルギー剤の限界を改めて教えて頂きました。抗アレルギー剤の治療に満足している患者さんは1/4しかいないという報告もあります。

花粉症の人が、マスクを買ったり、抗アレルギー剤を買ったりして、スギ花粉症のために1年に使う金額は平均1万2千円と言われており、日本全国で約600億円にもなります。医療費の高騰を抑えるため、抗アレルギー剤を、スイッチ市販薬として、ドラッグ・ストアで購入できるようになりました。病院の処方薬では、患者さんの自己負担は10〜30%で、90〜70%は国の負担になります。ドラッグ・ストアで同じ薬を買うと、患者さんは100%の自己負担で、国の負担は0と、医療費を抑える事ができます。
抗アレルギー剤には、眠気や口渇など、副作用があります。薬の副作用で、仕事中に事故を起こしてしまった原因を調べると、睡眠薬や向精神薬よりも、抗アレルギー剤が多いことがわかっています。たった一錠の薬でも「ウィスキーのシングルを3杯飲んだ」と同じくらい眠くなる薬もあります。アメリカでは、自動車を運転する人に、抗アレルギー剤を処方すると罰せられる州もあるほどです。日本では、抗アレルギー剤は、諸般の事情で、ドラッグ・ストアで処方箋がなくても買えるようになりましたが、服用後は車の運転にはくれぐれも気をつけて下さい。

欧米で、日本のスギ花粉症にあたるのが枯草熱です。ブタクサ花粉によるアレルギーで、スギ花粉に比べ、花粉のサイズが小さいので、肺にまで入りこみ、喘息を起こします。枯草熱の治療に、ホメオパシーによる体質改善が効果的という論文が、サイエンスと言う非常に権威ある科学雑誌に掲載されました。これにヒントを得て、当院では10年以上前から、1000名以上のスギ花粉症患者さんに、ホメオパシーによる体質改善を行っています。3〜4年治療すると、80%近い方が、抗アレルギー剤を服用せずに花粉シーズンを過ごせるようになっています。体質改善をしていくと年々、スギ花粉飛散期間中の抗アレルギー剤の使用量が減っていきます。スギ花粉症は、実は治る病気です

花粉の時期には、ゴーグルとマスクをして、外出も控えていた方が、体質改善後は、何もつけず外出できるようになり、『春の深呼吸はこんなにも気持ちがいいんですね。』と嬉しそうにお話になるのを聞くと、医者冥利に尽きます。副作用のある対症治療の抗アレルギー剤を、ドラッグ・ストアで売るような姑息的なことをするより、体質改善をした方が、毎年600億円を他のことに使えるし、患者さんにとってもハッピーですね。この体質改善は、カモガヤなど他の花粉症にも、ハウスダスト、ダニアレルギーなど通年性のアレルギーにも、ネコ、イヌなどペットアレルギーにも有効です。

さて、日本では花粉症のみならず、喘息、アトピー性皮膚炎など、アレルギーで悩まれる方が、増加の一途です。よく、ヨーグルトを食べて、アレルギーが良くなったと言う話を聞きます。ヨーグルトには乳酸菌が沢山含まれているので、腸内環境を整えることが出来るそうです。どうして、アレルギーと腸内細菌は関係があるのでしょうか?

アレルギー反応はIgEというタンパク質が、肥満細胞と呼ばれる細胞表面にある受容体に結合することで始まります。このIgEは、通常では血中濃度170IU/ml以下ですが、1000を超える方がいらっしゃいます。こうなるとアレルギー症状が強くなり、重症のアトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎などを発症します。この様な方の治療として、ゾレアという、IgEを無効化する抗体を注射する方法があります。大変高額な治療のため、重症の喘息患者さんでステロイドの吸入でも効果がない方に限定した治療法です。IgEの産生が抑えられるわけではないので、注射を継続しないと症状が抑えられないという欠点もあります。

ここ数年の当院での研究で、腸内細菌の善玉菌を増やすことで、IgEの産生が抑えられることがわかりました。IgEはリンパ組織で産生されますが、体のリンパ組織の60~70%は小腸の周囲のパイエル板にあります。パイエル板は腸内細菌から大きな影響を受けており、悪玉菌が増えると、パイエル板のリンパ組織が暴走します。腸内環境を改善することで、パイエル板のリンパ球の暴走が止まり、アレルギーを改善する事ができるのです。

乳酸菌は、6属100種類以上もあります。私たちの腸には、何種類かの乳酸菌がミックスして生着しています。腸内に生着している細菌をまとめて腸内細菌そうと呼びます。それぞれの人の腸に相性のいい乳酸菌しか、腸内細菌として生着できないので、腸内細菌そうは、1人1人違います。

生まれたばかりの赤ちゃんの腸に、腸内細菌はいません。その後の、生活環境や、食生活で徐々にその人特有の腸内細菌そうが形成されていきます。お母さんと、子供さんの腸内細菌は異なりますし、血液型によっても、異なります。いくらヨーグルトを沢山食べても、ほとんどの乳酸菌は胃酸で破壊されてしまい、うまく腸に入っても相性が悪ければ生着することなく、便となって出てしまいます。かえって、タンパク質が多いので、腸内の悪玉菌を増やしてしまう危険すらあります。腸内細菌を正常化する最も良い方法は、ご自分の腸内に生着した善玉菌を育てることです。

腸内の乳酸菌を育てるサプリメントを、半年間、服用していただくと、頑固な便秘や、下痢等の消化器の症状が改善すると共に、約60%の方でIgEが減少しました。すでに40名以上の方が治療を受けられていますが、グラフのように、9150もあったIgEが、1年間で829まで低下した例もあります。アレルギー症状も改善し、抗アレルギー剤やステロイドの内服や吸入を中止できた方もいらっしゃいます。

アレルギーは、対症的な治療では、解決しません。いまや、カゼのように、ちゃんと治す病気に、変わってきているのです。次回は、もう一つのアレルギー、遅延型アレルギーと腸の話です。

朴澤 孝治

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