2025年11月04日 / YouTube, ● 院長の部屋
最近「腸活」という言葉をよく耳にするようになりました。腸の健康を整えると、よく眠れる、免疫力が高まる、気分が前向きになるなど、さまざまな効果があるといわれています。
今回から5回シリーズで「誰でもできる腸活」の方法をお伝えします。初回は腸の基礎知識です。
腸の基本的な働き
腸は大きく「小腸」と「大腸」に分かれます。
小腸は長さ6〜7m、表面積は200㎡もあり、食べ物を分解し、栄養を吸収するのが主な役割です。炭水化物はブドウ糖、タンパク質はアミノ酸、脂肪は脂肪酸にまで分解され、体に取り込まれます。さらに小腸の粘膜には「パイエル板」と呼ばれるリンパ組織が集まり、免疫を担っています。
大腸は1.5〜2mで、水分とミネラルを吸収し、便を形成して排泄します。ここには腸内細菌が数多く住みつき、食物繊維を分解して短鎖脂肪酸を作り、腸の粘膜を守り、悪い菌の増殖を防いでいます。
腸と脳の関係 ― 腸脳相関
腸は「第二の脳」と呼ばれるほど神経ネットワークが発達しており、脊髄よりも多くの神経細胞が存在します。腸と脳は迷走神経などを通じて情報交換をしており、これを「腸脳相関」といいます。
そのため、ストレスでお腹が痛くなる、試験前にトイレが近くなる、あるいは腸の調子が悪いと集中力や気分が落ち込む、といった現象が起こります。腸内環境が整うことで睡眠の質が上がり、やる気や幸福感にもつながるのです。
腸と免疫の関係
腸は全身の免疫細胞の約70%が集まる最大の免疫器官です。外界と体の境界にある腸には、食べ物だけでなく細菌やウイルスも入ってきます。それを監視し、必要なものは吸収し、有害なものは排除するのが腸の免疫の役割です。
ここで重要なのがIgA抗体。これは腸の粘膜表面で病原体を防ぐ「見張り役」です。腸内細菌のバランスが整っているとIgAが増え、感染症やアレルギーの予防につながります。逆に悪玉菌が優位になるとIgEが増え、アレルギーや炎症が起こりやすくなります。
腸内細菌の種類とバランス
腸には100兆個以上、重さにして約1.5kgもの細菌が存在します。これらは大きく3種類に分けられます。
善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌など):腸を酸性に保ち、病原菌を抑え、ビタミンを合成し、免疫を調整する。
悪玉菌(大腸菌の一部など):食べ物を腐敗させ、毒素やガスを作り、炎症や老化を促進する。
日和見菌:善玉菌が優勢なら良い働きを、悪玉菌が優勢なら悪い働きをする“どっちつかず”の菌。
理想的なバランスは「善玉菌2割・悪玉菌1割・日和見菌7割」といわれています。重要なのは、多様な菌がバランスよく存在すること。特定の菌だけが多くても健康にはつながりません。
腸内環境のチェック
腸の状態を映すのは「便」です。便秘や下痢が続く、コロコロ便しか出ない、便やおならの臭いが強い、これらは腸内環境の乱れのサインです。便の内容は、3分の1が食べ物の残りかす、3分の1が腸内細菌、そして3分の1が腸粘膜の老廃物で、まさに腸の健康の鏡といえます。
腸活の3つのポイント
健康な腸をつくるには、
腸の動きを活発にする(規則正しい生活・運動)
腸粘膜を守る(バランスの良い食事)
腸内細菌の多様性を保つ(発酵食品・食物繊維・オリゴ糖を摂る)
この3つが基本です。
まとめ
腸は栄養吸収だけでなく、脳や免疫とも深くつながり、心身の健康を左右します。腸内細菌のバランスを整えることで、感染症予防、アレルギー改善、メンタルの安定、老化予防にも役立ちます。
次回からは「腸の蠕動を活発にする方法」「腸粘膜を守る工夫」「腸内細菌を育てる食生活」について、具体的にご紹介していきます。どうぞお楽しみに。
院長
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