統合メディカルケアセンター「Tree of Life」

2015年01月14日

Vol.04 自律神経のバランスを取りましょう

自律神経失調症とはどんな病気?

季節の変わり目に体調を崩しやすいと、お話になる患者様が沢山いらっしゃいます。5月病は、4月の年度初めの環境の変化で交感神経がすり切れてしまったところで、ゴールデンウィークに突入し、一気に副交感神経優位になることで、発症します。だるくて、意欲がわかず、胃痛や腰痛、頭痛など体の症状も出てしまいます。秋は、夏の疲れがでて、やはり交感神経がすり切れてしまうことで、体調が悪化します。この様なときは、病院に行って診察を受けても異常が見られないことが多く、自律神経失調症、鬱病、不定愁訴などの診断をうけて、痛み止めや、抗不安薬、抗うつ薬などの薬を処方されることが多いようです。

自律神経失調症はとても不思議な病名です。患者さんは、この病名をつけられると、妙に納得されてしまいます。診察台にお座りになり、第一声が『私は自律神経失調症です』とお話になる患者様もいらっしゃいます。ところが、自律神経失調症と言う病名は、自律神経の検査をして診断されるわけではなく、いろいろ検査しても異常がないので、仕方なくつける病気なのです。いったいどのように自律神経の具合が悪いかもわかりませんし、自律神経失調症を治す薬もありません。

ご自分の自律神経の状態をご存知ですか?

『自律神経のバランスを取りましょう』という本が沢山あります。現代はストレス社会で、交感神経が優位ですから、副交感神経を高めることで自律神経のバランスを取りましょうという内容のことが多いようです。これは、ある意味で正しいのですが、すでに体調を崩してしまった人には間違いです。交感神経が活発な時は、それなりにやる気もあり、きついなーと思いながらも体は動き、体調は比較的いいのです。この段階で、副交感神経を高めて、バランスを取るのはいいことです。でも、体調が悪いと感じたら、もうすでに交感神経はすり切れてしまっています。体調不良を訴えて当院を受診された240名の患者様の自律神経の検査をすると、半分以上の方は交感神経が慢性のストレスですり切れている状態でした。副交感神経機能は、保たれていることが多いので、相対的に副交感神経が優位となり、何となくからだがだるい、やる気がでないといった症状の原因となっていました。ここで副交感神経を高めると、さらに自律神経のバランスは崩れて、副交感神経優位が強くなります。そうすると、体がだるく、だらだらしていたい、いつまでもベッドからでれない。仕事、勉強をしたくないという状態になり、問題はさらに悪化します。ご自分の自律神経のバランスが、今どうなっているかを知ることが大切です。当院では、脈拍の変化から、自律神経のバランスや、肉体疲労の程度を検査しています。指にセンサーをつけて、数分で結果が出ます。気になる方は、検査を受けてみて下さい。はっきりとご自分の体調が目で見ることができるので、検査結果をお話しすると、患者様はまるで言い訳をするようにご自分の生活の問題点を話し始めます。睡眠不足、食事が不規則、仕事のストレスを抱えている、介護で疲れがとれない、休みが取れない、・・・・・・・・などなどそして、御自分で日常生活を注意されるようになります。仕事が忙しい方、ストレスを感じている方の大部分は交感神経の機能低下が見られます。一方、睡眠不足の場合は副交感神経の機能低下が見られます。

副交感神経がすり切れてしまっている方には、まず睡眠を十分に取り、体を休められること、温泉旅行などリラックス出来るような趣味をお勧めします。交感神経がすり切れてしまうと、薬をのんでも、いくら体を休めても回復しません。ご自分が楽しみながら、軽く汗をかくくらいの適度の有酸素運動をすることがすり切れた交感神経を回復させるのに有効です。運動の趣味を持ったり、ウォーキングや、ラジオ体操を毎日の生活に取り入れることをお勧めします。「運動の趣味が無いなー」という方や、「仕事が忙しくて運動する暇がない」という方には、ラジオ体操、ヨーガの太陽の礼拝、チベット体操などがお勧めです。1日5分の運動の習慣を毎日の生活に取り入れると、交感神経が再生します。交感神経が戻ってくると、自律神経のバランスがとれて、体調が回復します。呼吸法も、自律神経を整えてくれます。自律神経が調節してくれている様々な体の機能、たとえば、発汗、心臓の拍動、呼吸、消化などのうち、自分の意志でコントロール出来るのは呼吸だけです。呼吸をうまく調節すると、交感神経を高めたり、副交感神経を高めたりすることが出来るようになります。さらに脳内で自律神経を制御している幸せのホルモン”セロトニン”も呼吸法で増やすことが出来るのです。向精神薬や、睡眠薬を飲むより早く体調が戻り、健康を取り戻すことが出来ます。患者様の中には、生活を注意した後、自律神経がどのように変わったか、もう一度検査を希望される方がいらっしゃいます。バランスが整ったことが確認できると、とてもうれしそうにお帰りになります。

病名であきらめないことが大切

以前アレキシサイミアとアレキシソミアのお話しをしましたが、忙しい毎日に流されてしまうと、ご自分の体や心の悲鳴を聞くことが出来ずに、大きな病気を引き起こしてしまうことがあります。気づきがあると健康を早く取り戻すことが出来ます。自律神経の検査を受けることで、沢山の気づきが患者様にもたらされることがわかりました。そして、ご自分の毎日の生活の問題点、たとえば睡眠、食事、仕事と休息のバランスなどに気をつけると、自然に自律神経のバランスがとれ、体調が良くなっていきます。自律神経失調症の病名であきらめてしまわないで、皆さんも、自律神経の検査を受けて、ご自分の体調をチェックしてみませんか?きっと、健康維持に大切な気づきを得ることができると思います。