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2018年10月12日 / ,

これでいいのか?日本の医療  第8話 先制医療における遺伝子の役割

遺伝子研究の進歩はめざましく、様々な病気の原因遺伝子が見つかり、遺伝子治療も現実のものとなりました。これまで治療法のなかった病気から開放される事を期待されている患者様も多いことでしょう。一方で、すべての病気が遺伝子で決まることに、抵抗がある方もいらっしゃるでしょう。女優のアンジェリーナ、ジョリーが、がん遺伝子が見つかったため、予防的に健康な卵巣と乳房の切除術を受けたことは、センセーショナルでした。

 


 

小学校で学んだメンデルの法則の影響が強いためか、遺伝子は絶対的なものと思われていませんか?メンデルは、エンドウ豆の優性遺伝する形質を使って遺伝の法則を説明しましたが、実際には、様々な遺伝の仕方が有り、血液型のように単純に決まる遺伝はむしろ稀です。また、遺伝子は、一生変わらないものではなく、生活環境によって様々な修飾を受けることもわかってきました。遺伝子的にまったく同一の一卵性双生児は、同じ病気にかかりそうですが、実際に同じ病気になる確率は50%を大きく下回っています。

がんは遺伝子の異常によって起こる病気ですが、親から子へ遺伝するものではなく、加齢などの影響で遺伝子が傷つくことでおこります。アンジーのような先天的な遺伝子異常が、がんの原因となるものは5%以下です。最近、遺伝子診断でがん遺伝子が見つかり、癌恐怖症となって、高額の治療を受け、精神的にも、経済的にもボロボロの状態で、当院を受診された方がいらっしゃいました。このような新手の詐欺には是非注意してください。がん遺伝子が一つ見つかったからと言って、必ずがんが発症するわけではありません。2つ以上のがん遺伝子が重なり、がん抑制遺伝子が壊れることでようやくがんが発症します。がん遺伝子が見つかっても、発症率の高い先天性のがん遺伝子でなければ、がんの素因がある程度に考え、喫煙など発がんリスクを避けた生活をすることで十分です。

そもそも、人体は、60〜70%の水、15〜20%のタンパク質、13〜20%の脂質 、5〜6%のミネラル、0.5〜1%の糖質などでできています。このうち、遺伝子で規定されるのはタンパク質だけで、それ以外は遺伝子の直接的な制約を受けていません。遺伝子研究の成果を先制医療に生かすことは大変意義深い事です。しかし、最近の研究では、私たちの健康に影響するのは、遺伝因子30%、環境因子70%と言われています。生まれたときに、すでにどのような病気になるのかが決まっているわけではないのです。遺伝的な素因を知るのは大事ですが、如何に生活するかはより重要です。次回以降、先制医療における環境因子について考えます。
朴澤 孝治

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